2018.12.11地盤 , 地盤調査・解析

傾斜地に住宅を建てるメリットとは?押さえておきたい費用とポイント

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傾斜地には、比較的安価で購入できたり、眺望の良い場所に住宅を建てたりできるメリットがあります。しかし、傾斜地に住宅を建てる際は、地盤の状態や建築費用、法令など、注意しなければならないことがあります。

そこで今回は、傾斜地を購入して住宅を建てるメリットや注意点についてご紹介します。

 

傾斜地に住宅を建てるメリット

傾斜地は土地が傾斜しているため、住宅を建てるために土地を平らに造成したり、 住宅の基礎構造を斜面に対応できる形状にする必要があります。

傾斜地に建てられた住宅には、特殊な立地が生み出す快適な生活環境があります。例えば、目の前を遮る建築物がほとんどないため、カーテンやブラインドを開ければ思う存分眺望を楽しむことができます。また、採光性に優れており、風通しが良い場合には、きれいで新鮮な空気を室内に流せることも傾斜地に住宅を建てるメリットといえます。

さらに、土地を比較的安価な値段で購入できることも魅力の1つです。

 

傾斜地に住宅を建てたい!地盤調査は必須?

すでに土地が平らな状態で売りに出されている場合は、山を切り崩したり(切土)、土を盛ったり(盛土)し、何かしらの造成が施されています。

造成方法は「切土」か「盛土」のいずれかで平らな状態にされますが、その方法によって地盤の強さが異なる点に注意が必要です。中には「切土」や「盛土」だけでなく、それらが混在した「切盛土」も多くあります。

切土の部分は、山の自然地盤をそのまま活用するため、地盤は比較的締まっています。

一方、盛土の部分は人工的に土砂を埋め立てて地盤を造るため、埋め立てた土砂の締め固め次第では強度面で不安な点があります。また、高低差のある土地では、土地が低い側に擁壁(ようへき)が設置されることがあり、 擁壁に近い部分は埋戻し土が不安定な場合があります。そのため、傾斜地に住宅を建てる際は、地盤の安全性を確認するためにも地盤調査は必須です。

 

●擁壁って何?

擁壁とは、安息角(あんそくかく)を大幅に超える高低差のある場所に住宅を建てる際、住宅の下にある土が側圧で崩落しないように支える壁状の構造物です。安息角とは、土を積み上げた際、崩れないで土が残る最大角度のことで、一般的な土では30度から35度だと言われています。擁壁を作った後、擁壁は埋め戻され、新しく土が入ります。

 

●傾斜地に多い地盤改良工法は?

傾斜した土地に住宅を建てる場合は、地盤改良の方法として鋼管杭の採用が多くなります。鋼管杭を採用する場合は、杭を支える堅く締まった層の深度や分布を調べる支持層確認を推奨します。支持層の確認方法については、通常のSWS試験(スウェーデン式サウンディング試験)や近隣のボーリングデータから支持層深度を推測することもできます。

ただし、場合によっては当該地にて別途ボーリング調査が必要となる場合もありますので、どのような地盤検査をするかは専門家とよく相談しましょう。

 

傾斜地に住宅を建てる際にかかる費用

地盤改良の費用

地盤改良工事をしなければならない場合、地盤改良の手段としては鋼管杭の採用が多いのですが、基礎形状を深基礎とする場合もあります。鋼管杭の費用は必要本数、杭長により異なります。

 

●擁壁・造成工事

土地を平坦にして住宅を建てるためには、擁壁などを設置する造成工事が必要になる場合があります。擁壁の工事は、間知ブロックやPC擁壁、RC擁壁など形状や材質によっても費用が異なりますし、土地の傾斜の度合いやその面積の違いによっても費用は大きく変わってきます。

 

●地盤調査費用

地盤調査は必須です。比較的低コストのスウェーデン式サウンディング試験の場合は10万円程度からになります。土のサンプル採取ができるなどより詳しく調査できるボーリング調査(標準貫入試験)は数10万円程度からになります。

 

傾斜地に住宅を建てる際のポイント

ここでは、傾斜地に住宅を建てる際の注意点についてご紹介します。

 

●費用がかかるポイントを押さえる

傾斜地は、土地の値段は安価ですが、建築費用が比較的高額となる点に注意が必要です。

 

地盤調査は必須!?

傾斜地の場合、特殊な立地環境から資材・工作機械の搬入が難しいケースがあり、平地と比較して費用が上乗せされる可能性があります。

 

さらに建設場所が山林地ともなれば、上下水道や電気などのインフラ工事を新たに行う可能性もあります。

 

 

 

 

 

他にも確認しておきたいポイントは区域指定や関係する法律の規制などです。例えば、以下のような場合は注意しなければなりません。

・「急傾斜地崩壊危険区域」かどうか

・「宅地造成法改正」後の造成かどうか

 

急傾斜地崩壊危険区域とは、がけ崩れにより相当数の居住者等に危害が生ずるおそれがある急傾斜地と、がけ崩れが助長・誘発されないようにするため、切土や盛土など一定の行為を規制する必要がある土地のことで、都道府県知事が指定した地域です。

急傾斜地とは、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」、いわゆる急傾斜地法において、傾斜度が30度以上である土地とされています。

 

急傾斜で崩壊する恐れがあり、一度崩壊すると多くの住民に被害があると想定される区域内では、崩壊を助長・誘発する行為はすべて禁止されています。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されているエリアは、災害を引き起こす原因となる区域で危険性が高く、建物の建築には行政とやりとりして許可を得ることが必要です。非常に安く購入できますが、安全な場所ではありません。

 

住宅を建てるつもりで購入した土地が急傾斜地崩壊危険区域に指定されていると、安全に住むためには擁壁の設置など求められる可能性があり、擁壁設置に大きな費用がかかることが想定されます。都道府県庁の公式サイトで情報公開されている場合もありますが、確実に確認するには、都道府県庁に直接出向きましょう。

 

がけ崩れの様子

提供:土砂災害防止広報センター

すでに急傾斜地崩壊危険区域内にある物件を購入する場合も、出費が求められる場合があります。急傾斜地崩壊危険区域での土砂崩れを防止する工事は、国土交通省砂防部で定めている急傾斜地保全事業より国が半額工事費を負担して、都道府県が行います。国民の生命を保護するために行う工事なのですが、その工事で利益がある人には「受益者負担金」として工事費用の一部負担が求められることがあるためです。

 

 

 

 

「宅地造成法改正」後の造成かどうかも確認の必要があります。2002年9月の改正タイミングで、ひな壇型の宅地形成について、法律で厳しく管理されるようになりました。法律改正前に造成されていたひな壇型の宅地を購入する場合、宅地を開発した会社に法改正後何らかの対策を講じたかどうかについて確認してください。何もしていない場合、自分が対策費用を負担する必要が出るかもしれません。また、その会社は安全意識が低いと考えられるため、その宅地の購入は敬遠した方が無難です。

 

想定外の支出に対応できる予算を確保して、建築に取りかかる必要があるといえます。

 

●傾斜地の自宅建築についての知識を身に付ける

傾斜地に住宅を建てる際は、地盤調査は必須です。特に盛土部分や擁壁埋戻し部分の締まり具合の確認が必要です。また、住宅の基礎となる土地が足りない場合は、低い土地の部分に盛土をして平地の面積を確保しないといけないかもしれません。盛土部分と擁壁の埋戻し部分は、土がしっかり締まっていないと地盤沈下の原因となりますので、地盤調査をして地盤がしっかりしているかを確認する必要があります。

 

傾斜地の建築に関する規定については、「建築基準法施行令第 80 条の 3」にて規定されている、土砂災害特別警戒区域に指定されているかどうか確認の必要があります。この地域内に指定されている場合、その環境に応じて、「鉄筋コンクリートの外壁または塀」などによって、土石等に耐えられる構造にしなければなりません。

 

擁壁がある場合

提供:土砂災害防止広報センター

また、都道府県の条例により、他に細かな規定が決められている場合があるので、事前に確認しておくことが重要です。

一般人では何をどこまですれば良いのか難しい場合も多いので、地盤調査や解析の実績がある企業や専門家に相談してください。

 

地盤調査は、実績が豊富で信頼できる調査会社を選ぶようにしましょう。

 

 

 

●メリットだけでなくリスクも理解する

傾斜地に住む場合はメリットだけではなく、リスクも理解しておきましょう。

建物自体が受ける悪影響としてよくあるパターンは、基礎や外壁、内壁に生じるひび割れです。塀や門扉も、ひび割れやゆがみが発生する可能性があります。宅地を人工的に造るため、地盤に無理な力が働いてしまうことがありますので、擁壁も定期的なメンテナンスが必要です。

擁壁の劣化を放置していると、土砂崩れが起こり住宅そのものが崩壊する危険性もあります。擁壁側に他人の住居がある場合、その住居に被害が及べば損害賠償を請求されるリスクも無視できません。

 

また、近くの斜面が崩れてきて被害に遭う可能性もあるでしょう。日本各地で地震も発生しており、地盤の弱い斜面は、崩落の危険性を常にはらんでいます。

傾斜地で暮らすには、こういったさまざまなリスクがあることを理解し、できる限りの対策を講じる覚悟が必要です。

 

がけ条例とは?

傾斜地に住宅を建てる際の注意点と合わせて、がけ付近の建築を制限する「がけ条例」についても理解しておくことをおすすめします。

がけ条例とは、敷地ががけに面していて、一定の高さを超えるがけ付近での建物の建築に規制をかけた条例です。

がけ崩落の危険性を考慮し、家を建てる際は、がけの高さに応じて、がけから一定の距離や高さを確保しなければならないということが全体的な趣旨となります。

がけ条例の規制内容は都道府県によって異なるため、建築地のがけ条例を確認しましょう。

がけ条例が影響して、住宅を建てることができない土地や、擁壁(ようへき)の設置が義務付けられている土地があります。また、基礎を深くした深基礎とする必要があったり、杭などの地盤改良工事が必要となる場合があります。

 

 

がけ付近に住宅を建てたい場合は、その土地に建物の建築が可能かどうか、ハウスメーカーや工務店、建築家などにアドバイスを求めましょう。その土地ががけ条例に該当し、対策が必要となると、その分の対策費用が余分にかかります。

 

おわりに

今回は、傾斜地に住宅を建てる際の注意点についてご紹介しました。

傾斜地には、比較的安価で購入できたり、眺望の良い場所に住宅を建てられたりするメリットがありますが、地盤の状態や建築費用など、注意しなければいけないことがあります。

また、傾斜地に住宅を建てる際は、安全性を確保するために、高低差を考慮した地盤調査を実施する必要があります。

 

地盤調査に関して正確な結果を得るために、実績豊富な地盤調査会社に依頼するようにしましょう。

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ジャパンホームシールドは戸建住宅の地盤調査・解析、構造設計、住宅検査を手掛ける企業です。 年間10万件を超える地盤調査・解析実績は国内No.1。 住まいの安全・安心を追求し、住まいづくりに役立つ情報を発信いたします。

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